俗に裂きは三年、刺し八年、焼きは一生と言われ、鰻道を極めるには、生涯かけてもなかなか理想どおりにできるものではない。
蒲焼の語源(その1)
久松祐之著「近世事物考」 弘化5年(1848)より
当世うなぎをさきて焼きたるかばやきといふ、其製品とはかはれり、昔は鰻を長きまま丸でくしにさして、塩を付焼きたるなり、その形河辺に生たる、蒲の花のかたちによく似たる故に、かまやきと呼ぶなり。
蒲焼の語源(その2)
- 昔は長い丸のまま縦に口から尾まで竹串に刺して塩焼きにしたが、その形が蒲の穂に似ているので、がまやきといったがそれが後に転訛したとする説。
- かんばしい香りが早く人の鼻にはいる意味で、香ばやが転じたとする説。
- 鰻を焼いた時の色が樺色だとか、樺皮に似ているから蒲焼に転じたとする説。
- さくらの皮をすいて竹串の代りにはさんで焼く、さくらの皮をかばというからという説。etc.
さまざまな説がありますが、あなたはどの説を信じますか?
鰻の栄養学
うなぎは、ビタミンAの宝庫とも言える食品で、特にビタミンA・Eは牛や豚肉の10倍前後も含まれています。ビタミンAは、成長促進、視力を正常に保つ等の重要な働きがあります。
ビタミンEは、老化を防ぎ、美しい肌を作る働きがあります。又、コレステロールを抑え血液の流れをよくする働きもあります。
成長期のお子様からコレステロールの気になるお年寄りまで安心して召し上がって頂ける栄養素の高い食品です。
鰻が一年中で一番旨くなるのは初冬
土用鰻といわれて、夏が鰻の旬で味のすぐれた時期だと思われがちであるが、それよりも秋になった頃、鰻が産卵のために遠い海へ回遊する準備に、水温の少し下がり始める頃から餌を摂る量が増し、栄養が体内に蓄積されてうまくなるのである。
養成鰻でも、水温の高い夏はあまり食欲がないが、水温が下がると食欲が増して秋口は肥るといわれる。
土用丑の日と鰻
江戸時代、有名な科学者の平賀源内が、鰻屋の依頼で看板を書いた時、たまたま土用の丑の日であったので、墨鮮やかに達筆で「本日土用の丑の日」と大書して、店頭に掲げた。
ところが、奇才縦横で名声を馳せ、しかも科学者の先生の揮毫だったので市民の注目を浴びることとなった。
世はちょうど食道楽に贅を尽くそうとしている矢先であったから、人々は丑の日と鰻と栄養とが深い関係があるものと察し、これが千客万来の盛況を呈した。
うなぎを謳う
狂歌
大伴宿彌家持
石麻呂にわれもの申す 夏やせに よしといふものぞ むなぎとりせめ
返歌
やすやすも いけらばあらんをはたやはた むなぎをとると河に流な
俳句
土用鰻 三百貫も 売る覚悟 芦笛
川柳
夫婦して 鰻を食へば おかしがり
現代川柳
口に入る 土用は四季に かかはらず
和歌
けふ一日 ことを励みてこころよく 鰻を食ひてわれは立ち行く